一膳飯と枕団子の意味と風習について
日本では、故人が亡くなった後、魂が現世(此岸)から彼岸へと旅立つと信じられています。
この旅は、故人が亡くなってから49日間かけて彼岸、つまり悟りの世界へ向かうものとされ、仏教ではこの期間を「七七日(しちしちにち)」とも呼びます。
この49日の間、故人は「六道」と呼ばれる六つの世界を順に巡り歩くとされています。
七日ごとに「地獄」「阿修羅」「餓鬼」「畜生」「人間界」「天界」という六道の世界を旅すると考えられ、こうした信仰に基づいて、故人が安全に彼岸へ到達できるよう祈る風習が生まれました。
ここでは、故人の旅を支える供え物である「枕団子」や「一膳飯」について詳しく紹介します。

枕団子とは
枕団子は、故人が六道を無事に旅するためにお供えするもので、六つのお団子を一皿に盛ります。
これは六つの世界を象徴しており、それぞれの道の途中で故人の魂が安全に通れるよう祈る意味が込められています。
また、毎朝新しい水を供え、故人が道中で喉の渇きを癒せるようにとの願いも込められています。
この団子をお供えすることで、六道の入り口に立つ地蔵菩薩が故人を守り、無事に彼岸へ導いてくれるようにとの祈りを表しています。
一膳飯とは
一膳飯は、故人が仏の世界へ向かうための最後の食事として供える白米のことで、茶碗に山盛りにして供えます。
お腹が空かないようにとの気持ちが込められており、この一膳飯も故人の旅のための重要な供え物とされています。
かつては、一膳飯を棺に納める際、出棺のときに茶碗を割る儀式も行われていました。これは「もう現世の食事は必要ない」という意味を込めたものでしたが、現在では安全の観点から行われることは少なくなっています。
その代わり、霊柩車が出発する際にクラクションを鳴らす習慣が名残として残っています。
浄土真宗での違い
ただし、浄土真宗では教えに基づき、魂は亡くなった瞬間に仏の世界へ帰るとされております。
そのため、浄土真宗では枕団子や一膳飯の供え物は行わず、出棺時のクラクションも鳴らさないのが一般的です。
このように、一膳飯や枕団子には、故人が安らかに次の世界へ向かえるようにとの願いが込められています。
仏教の中でも宗派によって供養の仕方は異なりますが、いずれも故人の旅路を支え、想いを込めて送り出す風習として大切に受け継がれています。